自律神経失調症の鍼施術
自律神経は、身体を活動に適した状態にする交感神経は胸髄、腰髄から出ます。それに対して活動に備えて体を休息の状態にする副交感神経は脳と仙髄から出ています。そして、身体の支配先の各器官にまで分布するわけですが、その行く途中の筋肉を鍼で緩めて治療します。なぜ、筋肉を緩めて自律神経失調症を治療するという考えになるのでしょうか。
自律神経失調症の原因は主に、生活のリズムの変化であったり、ストレスと言われています。要するに、心身共に疲れきってその日の疲労がその日のうちに取れずを、繰り返し休日を過ごしても、あまりとれた気がしない。勿論個人差がありますが、それに対して対処しきれなかった結果なんだと思います。そうすると、テレビのチャンネルのようにパパっと切り替えられたらいいのですが仕事や学校等活動をする時と、ゆっくり休養するときの切り替えができなくなるんですね。身体的にも、精神的にもストレスがたまると筋肉特に、首から肩、背中、時には顎や腰の筋肉が凝り固まります。
交感神経は背中から腰の筋肉において、脊髄神経とリンクしています。要するに交感神経がずっと緊張していると背中から腰も緊張して、コリやハリ感を訴えます。また、その逆もあります。生理学でいうと内蔵体性反射や体性内蔵反射と言われるやつです。胃の調子が悪い時に背中もはってくるというのは、内臓体性反射になりますね。調度、胃の働きを司る交感神経は第6胸髄から第11胸髄から出ています。心当たりがある方は第6胸髄から第11胸髄の高さの位置で背骨の両脇の盛り上がった所を押してみてください。ズーンと鈍痛を感じると思います。逆に背中を治療することで胃の調子がよくなるというのは体性内臓反射と言います。また腸になると下部胸髄から上部腰髄からでていますから腰を中心に治療します。
ツボでもそうです。背部兪穴と呼ばれている背中の一行線のラインと交感神経とリンクしている脊髄神経が通っている固有背筋はちょうど一行線ラインです。そのラインに肺兪、心兪、膈兪、肝兪、脾兪、胃兪と並んでいます。この場合の肺というのは、東洋医学の五臓六腑の肺なので、現代医学の肺ではなく、呼吸を司る肺や鼻、喉等の呼吸器一式という意味です。兪は輸送の輸の意味や治癒の癒の意味があり、気を運んで治療するという意味です。このことは経穴の誕生に関わった先人達の時代から身体の器官を治療するにあたって、背中の経穴を使っていたということを表しています。
勿論、背中や腰だけでなく、副交感神経である迷走神経が脳幹から首を通って様々な器官に分布していますから、首の筋肉を鍼で緩めることも、自律神経失調症の治療において重要です。このように、鍼で筋肉を緩めることにより、痛みの疾患だけではなく自律神経に対しても施術することができます。
胸腰部の夾脊穴に刺鍼しています。刺鍼部位の周囲は血管が拡張して血流が増す為、発赤しています。これをフレアー現象と呼ばれています。