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腰痛の原因

腰痛の原因は何でしょうか。
日本整形外科学会、日本腰痛学会監修の『腰痛診療ガイドライン2019』によると椎間板ヘルニアや脊柱菅狭窄症、腰椎分離すべり症、筋筋膜性、脊柱靭帯の骨化や骨折、感染症、腎尿路系や婦人科疾患、腫瘍等が明記されています。
 
では鍼が適応症となる腰痛はどれでしょうか。
それはずばり筋筋膜性の腰痛、つまり筋肉の緊張によるものです。
これらはレントゲンやMRI、その他の検査をしても異常がみつかりません。
 
よって、以前は筋筋膜性の腰痛に対して原因不明、またはストレスや加齢が原因の腰痛と診断される事が頻繁にありました。
しかしここ最近は筋筋膜性腰痛の認知が広まりつつあり、病院でもそのように診断されたという患者さんも増えてきています。
 
次になぜ腰の筋肉が緊張するのでしょうか。
主に三つあります。
 
まず一つ目は運動不足(デスクワーク等、長時間同じ姿勢の維持)、二つ目は体の酷使(肉体労働やスポーツ)、三つ目は外傷です。
 
それでが一つ目の運動不足からいきましょう。
筋肉は体を動かさなくとも使われています。
立ちっぱなしでも座りっぱなしでも同じですが、その時の姿勢を支持するのに筋肉が収縮します。
 
しかも同じ姿勢だと決まった特定の筋肉に負担がかかります。
まだ動きがあると筋肉が収縮と弛緩を繰り返して、血管へのポンプ作用が働きで血流を促します。
しかし動かないとそのような作用がありません。
そして姿勢を維持する為に、筋肉が硬直し血管が常時圧迫されて血流が悪くなり筋肉が緊張します。
 
次に二つ目、体の酷使ですが、筋肉は普段通りの運動量しかこなせません。
よって普段より大きな負荷がかかると筋肉が緊張したり、痙攣します。
 
負荷をかけた後は、筋肉痛が無くなってから活動を再開するのが理想です。
でないとこれは腰に限った話ではないのですが、血管の数が少ない腱の様な筋肉に置き換わります。(線維化)
血管の数が少ないと、その分血流量が少ない筋肉となります。
よって必然的に筋肉が緊張し易く腰痛に繋がります。
 
最後に三つ目の外傷です。
転倒等で衝撃を受けると中に伝わらないように筋肉が固く緊張します。
また同時に中の軟部組織が損傷します。特に毛細血管が破れて内出血し、場合よっては吸収されずに瘀血となり快復の妨げになる場合があります。
 
あと、うちの奥さんでもありましたが、妊娠中に腰痛になる事があります。坐骨神経痛のページでも説明していますが、妊婦さんはお断りさせて頂いてますので、ご了承下さい。産後でしたら大丈夫です。ご相談下さいませ。
 


腰痛の症状

まず腰のどの部位に症状を感じるでしょうか。
腰の真ん中や外側が痛む、
そして痛む範囲も漠然として広い場合から指先でこことピンポイントで狭い時もありケースバイケース。
更に痛む所を押して圧痛がある時と、案外平気な時もあります。
これらは原因となる筋肉を特定するのに重要な判断材料です。
 
次にどんな姿勢や動作で症状が増悪するのか。
座りっぱなしや立ちっ放し、立つ時、座るとき下の物を拾う時や腰を後ろに反らしたり、スポーツや作業での特定の動き等、これも様々です。
これも原因を特定する重要な判断材料となります。
 
その次に痛み方です。
ズキンと痛む場合やダルイ感じや重く感じたり鈍痛であったりとそれぞれですね。
ちなみに筋肉が緊張して神経が圧迫を受けると最初はダルさや疲労感を感じます。更に圧迫を受けると痛みを感じ、最終的には感覚が麻痺して痛みが和らいだりあまり感じない事もあります。
 しかしそのような時は下肢症状を伴っている場合が多いです。いわゆる坐骨神経痛に代表される神経痛です。
 
話は少し逸れますが、上述したヘルニアやすべり症、分離症、変形性腰椎症や脊柱管狭窄症といった器質的な疾患も、ほぼ腰の筋肉の緊張が背景にあると考えています。
患者さんからの話でも十中八九これらの疾患の人はそれまでに腰痛がベースにあります。
 
どうして腰の筋肉が緊張していると器質的疾患につながるのでしょうか。
 
筋肉が緊張しすると伸び縮み自由であったものが、縮んだままになるわけです。するとその筋肉が付着している関節間が狭くなります。
そうなると腰椎の間にある椎間板が圧迫されて変性し、さらに狭くなると押し潰されて飛び出し腰椎椎間板ヘルニアとなります。

ただ十代までは骨が柔らかいので腰椎自体がやられてしまい分離症やすべり症になる事があります。

 
そしてこれは膝や首でも見られますが、負担に耐えようと骨棘を増殖させて腰椎が変形する事があり、変形性腰椎症や脊柱管狭窄症がこれに当たります。


次は筋肉ごとに緊張している時の特徴を説明していきます。
 
 

背中 腰

その時によって緊張している筋肉は様々。痛む部位や動き、姿勢や圧痛からどの筋肉が悪いのかを特定します。

 

大腰筋が緊張している可能性がある時の特徴

・膝を伸ばしあお向けで寝ていると腰痛が起きるが、膝を曲げ丸まっていると軽減する。
・椅子から立ち上がるとき腰痛が起きる。(特に長時間座った後が顕著)
・立ちっぱなし、歩きっぱなしで腰痛が起き座ると軽減する。
・身体を後ろに反らすとき腰痛が起きる。
・寝返りの時に腰が痛む
・咳、くしゃみをするとき腰にひびく。

・ぎっくり腰の経験がある
・腰椎椎間板ヘルニア、脊柱菅狭窄症等、上述した腰の器質的疾患がある。(もしくはあった)
・朝起きたとき腰が痛み、おもだるさや固まった感覚がある。
・下肢に症状がある。(痛み、おもだるさ、痺れ、疲労感)
・腰の中央がピンポイントでなく漫然と痛む。
・腰の痛む所を押しても気持ちいいくらいで痛まない。
・上述しているような動作や姿勢で姿勢で腹が痛む。

 
大腰筋は腰椎から太ももの付け根の内側までついています。
作用は腰の前屈と足を上にあげることです。
要するに体を丸めるための筋肉となります。筋肉は緊張すると伸縮性が無くなって縮んだままになりますから作用と逆の動きをすれば縮みっぱなしのところを無理やり伸ばすことになり痛みがでます。それが上記の動作や姿勢です。

更に咳や、クシャミをすると横隔膜が動きます。
横隔膜は呼吸運動を司っており、胸と腹の境目でドーム状になっています。咳、クシャミをすると横隔膜が急に大きく動き、近くにある大腰筋に当たってしまい痛みます。また大腰筋は体を輪切りにすると中心部に位置するために腰ではなくて、腹に症状を感じることもあります。

大腰筋は腰椎から太ももの付け根まで脊椎にそってついているので腰の中央のやや広い範囲が痛みます。またお尻や足の神経が腰からでているので大腰筋が神経を絞めつけてお尻や足に症状がでることがあります。

足といえば夜中にふくらはぎが痙攣するこむら返り、足先や足首がつるような症状も、まず大腰筋に刺鍼し、それでもダメならふくらはぎにも加えます。

鍼の話から少し変わりますが、痙攣に対してマグネシウムが効果的です。
サプリメントやマグネシウムを多く含む非精製塩で摂ると効率が良いでしょう。

 
またこの大腰筋があるのは体表から約5~10センチ。
その手前には脂肪組織や筋多裂筋や脊柱起立筋、場所によっては骨(腰椎の肋骨突起)がある為に押しても力が伝わり辛いです。
従って大腰筋が緊張していても圧痛は無し。
これを緩めるには長さの自由が効く鍼が一番良いのではないかと思います。

大腰筋

大腰筋の図。 深部にあるために腹側からみたものです。腰椎の側方から大腿骨の内側に走行。体を丸める作用があります


大腰筋の鍼施術

うつ伏せで腰椎棘突起間の外方に直刺で更に外方から斜刺で刺入します。大腰筋は上部は薄くて幅も狭く下部にいくにつれて、厚くて幅が広いので、L1/2間は下部よりワンサイズ短い鍼を用いて、ハの字に鍼が並んでいるようにします。
 
肋骨突起に当たって、大腰筋まで鍼尖が入らないときは大体、等間隔で刺入するときれいに入ります。腰の悪い人はやはり腰椎間が狭いですね。
 
受け手は腰や下肢に重だるい、ズキンと痛む、引き攣る感覚、下肢にはシュワシュワと炭酸水につかっている様な感覚があります。
 
通常は直刺と斜刺、2列刺鍼しますが、感受性や症状の程度に合わせて増減します。頑固な場合は3列うってやっと改善し始めた症例がありました。
また大腰筋にも浅層、深層があるのでそれに合わせて鍼の長さを変える事もあります。

 


腰方形筋が緊張している可能性がある時の特徴

・腰を左右にひねると痛む。
・場所は腰の外側が痛む。
・椅子から立ち上がるときと腰掛けるときの両方の動作で、瞬間的に痛む。
・ラジオ体操で、身体を横曲げ(側屈)すると倒してない方が痛む。
・腰の後ろ側は痛みがなくて、脇腹から脊椎に向かって押すと痛む。
・右側が痛むのか左側が痛むのかが明瞭である。


腰方形筋は骨盤から腰椎の肋骨突起、12肋骨についている板のような平べったい筋肉です。腰を横に倒したり回したりするときにつかう筋肉なので左の方形筋であれば右に倒したり、左右に回したりすると痛みますし、立ち座りの瞬間に筋肉が伸ばされます。

脇腹から腰椎の肋骨突起に向けて押すと腰方形筋が触知でき緊張していると圧痛があります。腸肋筋と間違えない様に押します。

 
腰方形筋

大腰筋と違い腰方形筋は体の外側に位置するので、左右痛む側が明瞭である。 対して大腰筋は深部でかつ中心部にあるのでどちらが痛むのかがわかりにくい事が多い。


腰方形筋の鍼施術

うつぶせでは鍼が下に垂れるので横向きで腸骨稜から上に向かって直刺します。もし、うつ伏せで刺鍼するなら10番位の太い鍼を使って、下に鍼が垂れるのを防ぎます。

ここでのポイントは鍼を打つまえにしっかり腸骨稜と12肋骨を触知することです。男性と女性では筋肉のつき方が違います。断面図をみればわかりますが男性は横まで腰方形筋が回り込んでいます。一方、女性はそこまで横にきていません。

脊柱起立筋群・回旋筋・多裂筋が緊張している可能性がある時の特徴

・椅子に腰掛けていると、腰のやや中央が痛む(しかし左右どちらが痛むかは明瞭)
・腰椎の少し横を指圧すると痛む
・洗顔の時や下に落ちた物を取る時等、前屈みになると腰が痛む

・腰を左右に捻ると痛む


脊柱起立筋群(棘筋・最長筋・腸肋筋)・回旋筋・多裂筋は脊椎を走行しており姿勢を正す筋肉です。
腰を前に倒すと腰のやや真ん中が痛みます。そして仙骨までつながっているので腰の下部やお尻の上部まで痛むこともあります。また比較的浅層にある筋肉(とは言っても部位と体格によってかなり異なるが体表ギリギリから深い所では6センチ)なので緊張している部位を押すと痛む事が多い。

固有背筋群

比較的浅層にある筋肉なので、悪ければ押して痛みます。

 

脊柱起立筋群・多裂筋・回旋筋の鍼施術

夾脊穴や背部兪穴の辺りになりますが、圧痛を刺入点とし直刺します。重症の場合は2列、3列に打つ場合もあります。
12胸椎から上に刺鍼する場合は肺に近いため必ず鍼尖を胸椎にあてます。
またこれらの筋肉で一番外側にある腸肋筋は2行線から内側に向けて横刺します。
そして仙骨上に刺鍼する際、症状が頑固な場合は下髎や白環兪から頭側に向けて仙骨を擦るようにここでも横刺します。
この横刺のやり方は明治国際医療大学式で、元々は残尿感や遷延性排尿(尿が出始めるまでに時間がかかる)に対する施術です。


腸骨筋が緊張している可能性がある時の特徴

・あお向けで寝ていると鼠径部が痛む。
・椅子から立ち上がる時に鼠径部が痛む。
・立っている時に鼠径部が痛む。
・膝を挙上すると鼠径部がつっかえた様に痛む         
・太ももの前側が痛む

・上記の症状は無いが、腰痛に対する施術効果が思わしくない場合

 
腸骨筋は腸骨の前面から内ももの付け根(小転子)に付いているため発症部位は鼠径部、つまり骨盤のベルトが当たる所(上前腸骨棘)の内側から内下方です。
ビキニラインと言った方がわかりやすいでしょうか。
 
腰痛のページでなぜ前面にある腸骨筋と、思うかもしれませんね。
腰痛の施術ではまずうつ伏せで腰や場合により殿部や下肢の筋肉を緩めます。しかしそれでも経過が思わしくない時は他に原因があると考え、うつ伏せでは施術できない、体の前面にある腸骨筋や中殿筋や小殿筋の前部線維も視野に入れるわけです。
 
腸骨筋は大腰筋と同じ作用で上体を前に屈めたり、下肢を挙上する役割をします。腰痛では大腰筋が原因だと思われる事が非常に多いので、腸骨筋も緊張し易いからだと考えています。
 
また腸骨筋の緊張は骨盤をへだててお尻に症状がでることもあります。そして、大腿神経が腸骨筋の中を通っているので腸骨筋が緊張して神経を圧迫していれば、太ももの前側に症状がでます。

腸骨筋

大腰筋と作用が同じで、併せて腸腰筋と総称される。足のつけ根が痛む事が多いが、腸骨を隔てて殿部に痛みを感じることがある。


腸骨筋の鍼施術

仰向けで膝の下に少しクッションを入れて軽く膝を曲げ、腸骨筋を緩ませた状態で刺鍼します。骨盤は男女差があるので女性は少し斜刺、男性は直刺で上前腸骨棘から上下に鼠径部に沿って骨盤に鍼尖を添わせるように刺鍼。近位でしたら仙腸関節に当てるようにうちます。


最後に

以前は腰痛の原因は腹筋、背筋不足だから腹筋、背筋を鍛えようという考え方がありました。
しかし腰痛があるうちは止めておいた方が良いでしょう

反対にずっと横になっている方が良いかというと、そうでもありません。

過度に安静にしていると筋肉が萎縮します。
ウォーキング等の軽い運動から「悪化するようであれば無理をしない」を守り、行うと良いでしょう
 
ほんの数年前まで、腰痛の8割は原因不明だ言われていました。
最近では超音波診断装置で筋肉や筋膜の状態を可視化できるようになったのもあり、筋筋膜性腰痛がメディアでも取り上げられ、認知が広がりつつあります。
私の経験上、原因不明だとされてきた腰痛に対し、鍼で改善するケースが非常に多いと感じており、ご自身の腰痛の原因に応じて対策を選択してもらえたらと思います。
 
 

 
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